足立建築 代表の足立です。
先日、求人情報ページを公開いたしました。
おかげさまで多くのご相談をいただいておりまして、さすがに現状の人員体制では対応が難しくなってきております。
現場管理のお仕事をされていて、なおかつ弊社の家づくりに共感してくださる方がいらっしゃれば、ぜひともお越しいただきたい!そんなふうに思っております。
採用情報のページはこちらからご確認ください。
https://www.adachikenchiku.com/recruit/
さて、それでは今回のブログ、本題です。
非常に課題の多い住宅業界。
お客様サイドも家づくりをきちんと学ばなければ、金銭的にも、社会的にも、将来後悔する可能性が高まってしまうことは、これまでのブログでも述べてきた通りです。
弊社HPでも触れてありますが、日本の住宅業界は先進国中でも断熱性能では最低レベル。家づくりのプロであるはずの工務店や設計事務所の大半が、プロとしての知識・技術を持たずに家づくりを行なっている現実があります。
家づくりを生業としている住宅会社に比べ、多くのお施主さまは一生に一度の家づくり。乱暴に言えば、素人同然なわけです。そんな素人を相手にしている商売ですから、住宅会社もそんなに勉強せずとも仕事ができました。情報をアップデートせず、20年前と同じような家づくりをしていても、お客様から文句を言われることもなかったわけです。
また、どんな家づくりをしていても、引き渡し直後に問題が出てくることは稀です。不具合が出てくるのは入居後10年ほど経ってから。雨漏りなどが起きても、住宅会社も自らの知識不足や施工技術の拙さによるものだと認めません。業者も「年数が経ったし、しょうがないですね」という言葉で済ませてきました。
施工や設計のレベルの高低は、専門知識であるがゆえ、お客さまもきちんと知る術はありません。というか、専門の設計者・施工者ですら耐久性をまったく考えずに家づくりをしているわけですから、お客さまに分かるはずはないのです。
あまりにもおかしい話だと思うのですが、住宅・不動産業界は、このようなかたちの悪循環の只中にありました。正しい情報がないのだから、消費者はこの状況を知るよしもありません。
家づくり情報の取得方法の変化
つい最近まで、お客さまが家づくりについて調べる方法といえば、住宅雑誌やインターネットでの検索がメインの方法だったのではないかと思います。
しかし、お客さまの目に触れる住宅雑誌やWebポータルサイトは多くが「広告」。住宅会社をスポンサーとして成り立っているメディアなので、正しい情報を扱っているのはレアケースです。
これは考えてみれば当たり前なことなのですが、そもそも事業者の9割がNGな家づくりをしている住宅業界です。住宅メディアだって、多数派9割に迎合しなければ生き残れない道理です。構造的に、正しい情報がお客さま側に届かなくて当然だと思いませんか?
例えば住宅雑誌では、誌面映えする、意匠性の高い住宅を作っていれば、それだけで一歩リードすることができました。数十年後の耐久性や、ライフサイクルコスト(生涯コスト)などの目に見えない部分は誌面ではそんなに重視されないからです。
施工品質や耐久性に明らかな差があったとしても、住宅雑誌はすべての掲載社がお客さまですから、比較して、明らかに優劣がつくような表現の仕方はできません。(住宅業界がそれらの差を統一基準で比較できないという、根本的な問題もここには含まれています)
しかし、ここにきて感度の高いお客さまは、住宅メディアなどの情報を信用しなくなってきています。
最近増えてきた無料の住宅相談所もそうですが、結局のところスポンサーは住宅会社。それらの会社に誘導するための仕組みですから、そもそも情報は歪んでいるということに、消費者も気付きつつあります。これは昨今、テレビなど既存のマスメディアへの信頼性が薄くなってきていることとほとんど同じ構図と言えるでしょう。
いずれにしても、きちんといい家を建てていたり、正しいことをやっている事業者はどこまで行っても少数派。そのような事業者の情報が正しく、消費者に到達することはこれまでほとんどありませんでした。
しかし、コロナ禍を機に、業界での情報発信方法が一気に変わります。住宅メディアのような媒体を介さず、YouTubeその他でダイレクトに情報発信を行う業者が増えたのです。
SNSの隆盛によって、マスコミを介さず個人が情報発信する時代(個のメディア化)に突入した、と言われますが、それと同じように、住宅事業者も自らが情報発信をするようになったということですね。
また、それと並行して、最近はTwitterをはじめ、お施主さまがご自身の家づくり体験を発信する場も増えてきました。お客さまにしてみれば、自分たちと同じ立場で、しかも先んじて家づくりを行なっている「先輩」ですから、そういう方々のお話を聞けるのは家づくり検討中の方にとっては、とても有意義だと思います。
ちなみに、先輩方の中でも、勉強を重ねて住宅会社以上の知識を持った方々は「プロ施主」と呼ばれています。本当にプロ以上の知識を持っている方も多く、そういう方々がハウスメーカーや工務店に相談にいくと非常に面白いことが起きます。プロ施主の方々があまりにもハイレベルな質問をされるため、並の住宅会社ではまったく太刀打ちが出来ず、一瞬で知識不足・底の浅さが露呈してしまうのです。
Twitterのツイートを一部引用すると、この通り…
完成見学会でC値を伺うと測定していないと言われたので、それ以上は相談するのをやめました💦
— なゆ (@nayutame) April 16, 2021
②気密測定
C値(家の隙間)を測る行為
C値答えられない工務店さんはごめんなさい
昔測ったC値はいくつだから
お客さんの家もこれくらいで建ちますよーもごめんなさいC値は建物毎にかわる!
職人さんの腕次第!
全棟気密測定が大切!じゃないとあなたの家のC値は担保されない!
次回 #UA値
— うさぎ(家建てたくて勉強中) (@usagi_ietate) March 18, 2021
許容応力度計算で耐震等級3取得しますって言ってんのに「工務店で建てるってことは、耐震性は求めないんですね!?」って言ってくるの疲れるからやめてくれ、某最大手ハウスメーカー 営業さん…
— ゴリ ゴリラ (@mrsouth_GCHK) October 11, 2020
…このようなエピソードがゴロゴロ転がっているわけです。
全国各地のプロ施主の皆さんによって、受注ほしさに口当たりのよい言葉を使っている住宅会社はどんどんメッキが剥がされていきます。
世の中、9割の住宅会社は許容応力度計算をやっていないわけですが、それだけで9割の会社が、家づくりのパートナー候補から除外される。まだ一般的とは言えませんが、そのような選別が、すでに始まりつつあるのです。
これまでは市場にはほとんど、間違った情報しかありませんでした。これはひとえに市場の大多数を占める「知識不足のプロ」が情報を発信していたためです。
しかし今は、正しい情報も、きちんと探せば見つかります。情報の取捨選択は自らの責任で行う必要がありますが、それでも、これは大きな進歩です。
住宅会社も、自分たちが発信する情報に責任を持たなければなりません。これまではそれっぽいことを言っていればお客さまは信じてくれましたが、賢い消費者は自分たちでその情報の裏付けを取るようになります。
「ベタ基礎だから強い」とか「吹き付け発泡だから高気密高断熱」とか、エビデンスに乏しい内容をHPに書いているようではもういけないのです。受注欲しさのポジショントークは、知識を得たお客さまには看破されてしまいます。
お客さまは、業者のセールストークを見抜くことが最大の自己防衛になるわけですから、この流れは今後も加速していくでしょうし、そうなれば、顧客に選ばれず、淘汰される住宅会社も出てくることでしょう。
これからの家づくり勉強
さて、家づくりにおける情報収集の重要さはお分かりいただけたかと思います。
「じゃあ実際にどうやって勉強すればいいの?」ということになりますよね。
情報を得るときは、なるべく一次情報に近い部分で知ることです。加工されていない情報を、自分で見つけ、判断する必要があるということですね。間違った情報の多い住宅業界であれば、なおさらです。
メディアのような第三者(中間業者)を挟まず、住宅事業者が情報発信を行うということは、そういう意味では情報の偏向が多少は無くなります。もちろん、発信している事業者が知識不足であればそれまでですが、さまざまな発信者の情報を比較することで、信頼性をチェックすることもできるはずです。
これは本当に注意していただきたいのですが、メディアは、プロ向けの専門誌であっても間違った情報が多いです。自媒体の利益やポジションを守ろうと、情報を誇大して発信したり、誘導しているのが散見されます。
掲載内容の裏付けを取れるほどの知識あるスタッフが、そのメディア内に存在しないのも問題です。専門知識のある方に監修をお願いしていればまだしも、そういうケースは稀なのです。
いずれにしても、その情報の出どころは信頼できるのか?ということを、しっかり目利きしていただく必要があるということです。
消費者さんからの質問に答えてくれる業者さんが多いのも、あなたにとっては追い風となるでしょう。私自身も、浜松地域の優良工務店さん方とともに「家づくり相談室」というトークライブをYouTube配信していますが、このようなかたちで消費者さんと関われることは非常に嬉しく、毎週火曜日の配信を楽しみにしています。
ここでは、真面目に家づくりに取り組む優良な事業者たちが、真摯に、ユーザーさんからの質問にお答えしています。(もちろん、本当に間違いがないかどうかは、あなたが自分で判断する必要があります。我々も間違ったことをお伝えしている可能性だってあるのです)
とにかく、今は、あなたの家づくりのためになる情報が、身近なところで入手できるとてもいい時代です。
Twitter界隈には建築済みのお施主様から、建築中、建築会社検討中など、さまざまな立場の先輩方がいて、悩みを共有し合えるのも有意義ですね。ぜひとも、プロ施主の方々とコミュニケーションを取ってみてください。
また、勉強するソースとして私がお勧めしたいのは、以下のYouTube。どれも、非常にわかりやすく、また非常に重要なトピックを扱っています。(五十音順)
あすなろ建築工房 関尾さんのYouTube
要点を抑え、非常にわかりやすく家づくりのことを教えてくださっています。あすなろ建築工房さんは、工務店のあり方として、弊社の理想とするイメージに非常に近いです。関尾社長とは親交も深く、個人的にもたいへん尊敬しています。
凰建設 森さんのYouTube
森さんは温熱環境や湿度コントロール、設備機器活用のプロフェッショナル。いわゆる環境系の設計者さんです。我々が配信している「家づくり相談室」の登壇者たちは、私を含めて、森さんの生徒です。喩えも非常に上手ですね。
構造塾 佐藤さんのYouTube
熱い志を持つ、構造のエキスパートです。構造は住宅業界ではもっとも注意いただきたい領域なので、最低限、このチャンネルだけは見ていただくべきだと思います。構造のことを、分かりやすく、また正しくお話できるのは佐藤さんだけです。
日本エネルギーパス協会 今泉さんのYouTube
以前のブログで取り上げた動画は、こちらの今泉さんの動画でした。なぜ温熱環境設計が必要かなど、本質的なところから取り上げてくださっています。家づくりを根本から見つめてくださっていて、みなさんに見ていただきたいチャンネルです。
おまけ:JJJチャンネルのYouTube
家づくりのことをさらに突っ込んで知りたい方はぜひ。東大の前先生や、前述の今泉さんが出演されている動画もあります。(建売業界の現状が気になる方は、今泉さん出演の回を見ていただくと非常に面白いです)
以上です。(他にもあれば後日追記します)
これらのYouTubeで時間をかけて勉強して、出てきた疑問や不安をTwitterやClubhouseで先輩に相談する。分からないところは聞いてみる。そんな流れで家づくりを学んでみるのがおすすめです。
弊社もTwitterアカウントで情報発信しておりますので、何かありましたらお声かけください。
足立建築のTwitter
いずれにしても、知識武装をしていただいてから工務店を探すのが、一番失敗の少ない方法になるかと思います。ぜひ参考にしてみてください。
次回のブログは、そんな先輩施主さんたちが現在ぶつかっている壁について、です。お楽しみに。
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