安心できる家づくりの最低条件は●●である

  • 2020年12月13日
  • 2020年12月13日
  • ブログ

こんにちは、代表の足立です。

前回のブログでは、住宅を建築する際に、

① それが正しい性能を担保できる設計になっているか(設計検査)
② その設計図通りに正しく施工されているか(建設検査)

上記のどちらも、現状の法律にはチェックする機能がないことをお伝えしました。

私個人的には「日本の住宅業界、本当にこれで大丈夫かな…」と思ってしまうところですが、実際に家づくりを考えているあなたにとってみればもっと切実な話ですよね。

なにせ、建築を依頼しようとしている住宅会社がきちんとした家を建てているか、まったく確証を持てないわけですから、知ってしまうと不安も大きくなってしまいます。

ふたつ前のブログでお伝えしたように、100軒の家をランダムに調査したら100軒すべて構造強度が不足していたと判明してしまったような住宅業界です。

この大きな(しかし誰も指摘しない)問題を解決しなければ、本当の意味で安心・安全な家づくりはできないと、あなたもそう思いませんか?

今回は、このようなテーマでブログを書いていきたいと思います。

日本の家には“絶対に”検査が必要

とはいえ、解決策はシンプルです。

答えを先に言ってしまえば「公的な第三者検査を入れましょう」ということになります。今回のブログタイトルの答え合わせをするなら「安心できる家づくりの最低条件は公的検査である」ということですね。

公的な第三者検査というのは日本の住宅業界にはひとつしかありません。それが「住宅性能表示制度」です。

これは、目に見えない住宅性能を、お施主さんでも分かるように客観的に等級で評価し、自分たちに必要な性能を選べるようにしたもの。住宅性能を、耐震性や省エネ性、メンテナンス性など10項目の性能に分類した上で、その性能がきちんと担保されるよう、設計時には『設計検査』、工事中には『建設検査』と、二種類の第三者検査が入る公的な評価制度です。

弊社は建築する全棟に性能評価(住宅性能表示制度の通称)を行っており、耐震性や断熱性能など、かなり細部まで設計の検査と、工事中の第三者検査を実施しています。

住宅性能表示制度はすべての会社にとって重要で、かつ実施すべき制度。国も、その普及を目指していました。しかし、制度設立からおよそ20年が経ったというのに、実施している会社は、すべての住宅会社のうち1%にも満たないような状況です。

多くの住宅会社にとって、住宅性能表示制度の導入は大きなハードルになっているようです。

しかしながら、もし住宅性能評価の検査を車に例えるなら、これは製造時の品質保証(ISO)に相当するものです。第三者的な審査登録団体が定めた基準に品質が合致していなければ、メーカーはそもそも、その車を販売することができません。また販売後も、車検を受けなければ「車検証」が作成されず、その車は公道を走ることができません。

ISOや車検は、車両の安全性を証明し、オーナーの命を守るための重要な検査ですが、家の場合には、そのような検査が一切ありません。災害リスクはもちろん、日常的に風雨にさらされているような過酷な環境下にある住宅が、なんの検査もなく建ってしまってよいのでしょうか? 個人的には、はなはだ疑問です。

家の温度や熱環境、耐震性能などをチェックできる公的な制度は、住宅性能表示制度を除けば長期優良住宅制度しかありません。

しかも、長期優良住宅の場合、あるのは設計検査のみ。その設計図通りに建っているのかをチェックする工事中の検査は、今のところありません。極端に言えば、設計図と違う材料が使われていても、そのまま建ってしまうということです。(性能表示制度を導入している会社でも、「建設検査」はやっておらず実は「設計検査」という設計図のチェックのみ、というケースが多いです)

そもそも、長期優良住宅制度の成り立ちが、住宅性能表示制度があまりにも普及しないので泣く泣くダウングレードしたという経緯がありますし、そうなってしまうのも当然と言えば当然なのですが、やはりこれだけでは安心できません。「長期優良住宅を建てています」という会社も、まだまだそれだけでは信用できないということですね。

国も現状の危険性に気付きはじめ、「長期優良住宅に建設検査をつけよう」という動きも出てきています。ですので、今後そのあたりの制度が改善されていく可能性も十分にありますが、実装されるのはもう少し先の話になるでしょう。

いずれにしても、検査がない状態で家が建つこと自体が、普通ならありえないことだと思います。

住宅性能表示制度は難しい?

さて、この住宅性能表示制度、「ハードルが高い」と表現しましたが、客観的に見ればまったくそんなことはありません。というか、「導入していないこと自体がありえない」とそんなふうにすら思います。

そもそも、巷でアピールされている「耐震等級」も、住宅性能表示制度の基準です。この制度を利用していないのに、「うちの家は耐震等級3です!」といくつもの住宅会社が自称で自慢してしまっているわけですが、ちょっと考えれば、それがおかしいことだと分かるはずです。

評価員という、性能を評価してくれる専門家がいるのですが、評価員によってチェック精度にはバラツキもあり、住宅性能表示制度自体はまだまだ改善の余地があるものです。しかし、10年以上もずっと住宅性能表示制度を全棟で実施し続けている弊社ですら、どのような評価員が派遣されたにせよ、設計図や現場チェックにおいて指摘がまったくないということは滅多にありません。

構造や温熱環境は、設計段階は元より、工事中に気を付ける点も、無限かと思えるほど(数えるのが不可能なくらい)あり、正直言ってすべてを指摘なく行うのはかなり難易度が高いのです。

ほとんどの物件で、何かしらのヌケモレがあり、その都度評価機関から指摘をもらって図面を修正したり工事中に手直しをしたりしていくというのが通常の流れです。

またもちろん、その設計図通りに建てるためのチェックも多岐にわたります。たとえば基礎部分だけでも、鉄筋のピッチや、コンクリートの配合率など、シビアにチェックしなければいけない部分が本当にたくさんあります。

これは一般の消費者には伝わらない部分なのですが、数千〜数万点の材料があって、そのすべてがそれぞれ住宅性能に影響を及ぼすわけですから、それを正確に作り上げていく難しさは相当なものであると、きっとご理解いただけるのではないかと思います。

とは言え、ここで弊社が受けている質疑や指摘は、家づくりが正しく進んでいることを把握するためには絶対に必要なものです。

ほとんどの会社は、家づくりにおいてこの評価員からの質疑や指摘を受けることなく、つまりほとんど軌道修正をすることもなく、設計・建設を進めていくわけですが、それらの会社も、もし仮に住宅性能表示制度を入れたらおそらくかなり多くの指摘が入ってくるはずです。

当人たちから見ればハードルが高い制度ですが、客観的に見れば、安心できる家づくりを行うために最低限必要なものだということです。

これは本当にご注意いただきたいのですが、住宅性能表示制度や長期優良住宅をやっていない会社ほど、もっともらしい言い方(自称)で自社のスタンスを正当化していきます。

曰く、

「長期優良住宅はオーバースペックです」

とか、

「住宅性能表示制度は費用が余計にかかるし、その仕様になっているから、その分の費用を別のところに使いましょう」

とか。

手練手管で、お客様を「やらなくて大丈夫」という方向に持っていこうとするものです。

いずれにせよ、それほどに難しい性能設計&施工を、世の中の多くの住宅会社は検査を受けることなく、そのまま建てて、お客さまに提供しているということです。

もちろん、自社のみで構造や温熱の計算もして、工事中のチェックも完璧にしておられる業者も、もしかしたら存在するかもしれませんが、相当に緻密な計算や工事チェック体制が必要なことから、第三者のチェックなく完璧にこなすことは、個人的には非現実的だと感じています。

特に、長く家づくりを営んでいる会社ほど、手の抜きどころがわかっているもので、「これくらいなら大丈夫」と甘く考えていらっしゃるケースも多いのです。

実際のところ、ベテランの工務店ほど現場は業者任せです。家づくりでは、図面を書いた設計者がすべての責任を負うわけですが、ほとんど現場をチェックしない設計者も数多く存在します。

性能評価を行うと、各工程の状況をすべて記録に残さなければならないため、必然、現場に足を運ぶ回数も増えます。私自身も、かなり頻繁に現場を訪れており、おそらく他社の設計士さんの10倍程度の時間を、現場にかけています。

その時間を削減することができれば、もちろん効率もコスパ(人件費)もはよくなるのですが、毎回チェックするのとしないのとでは、施工精度も段違いです。

弊社では、住宅の基礎(土台)を作るための生コンクリートの強度検査も実施しているのですが、これは住宅性能表示制度では組み込まれていない検査です。住宅事業者でこの検査をしているのは工務店・設計事務所レベルでは0.1%くらいかと思いますが、住宅性能表示制度の検査では不十分だと思うから、このような検査まで、手間とお金をかけて実施しているのです。
実際、この試験を請け負っている業者に聞いたところ、年に1〜2回程度は、基準の配合になっていないために生コン車を帰すことがあるそうです。今はコンクリートの配合をコンピューターが行うため、かなり少なくなったようですが、昔は1〜2割ほどは帰していたと、そんな話も聞きました。

ただし、いくら外れを引く確率が減ったとはいえ、お施主さんにしてみたら、その生コンが自分の家に当たる可能性はあるわけです。その1〜2回ですら、あってはならないと思うから、弊社は住宅性能表示制度を導入し、足りない検査は別途行ってまで、すべての物件・工程をチェックしています。

基礎工事に関わる部分だけでも、

・ミルシート
・コンクリート配合表
・納入書
・鉄筋の検査証明書(トレーサビリティ)

など、住宅性能評価では当たり前に揃えるべき資料はいくつもありますが、住宅性能評価を導入していないほとんどの会社がそれらの保存書類を全く保存しておりません。こうした書類を、軽く見る方々も多いですが、前述したような『万が一』をなくすためには絶対に必要なものです。

多くの会社は実際に上記のような検査をしていないわけですが、それを許容してしまった時点で、それは手抜きです。このような業者側のマインドが、欠陥住宅が生まれる温床になっていると、私はそう思っています。

性能評価を、さもめんどくさいことのように書いていますが、家づくりを製造業としてみれば、工事中の検査は他業種では当たり前の事です。すべての会社が実施しなければいけないはずなのに、9割以上の住宅会社がやっていない今の業界の状況がおかしいのです。

世の中の大多数の建築業者は、自分が建てている家を検査したことがないのです。

もちろん、中にはきちんとやっている会社もあるはずなのですが、それならば住宅性能表示制度を導入いただき、きちんと公的なお墨付きを得ていただきたいなと、強くそう思います。そうでなければ、よい家と悪い家の区別がつかず、消費者を惑わせ続けることになってしまうからです。

最近では、優良な住宅会社のリストやサイトを作ろう、という動きも活発で、弊社もお誘いを受けましたが、そちらは丁重にお断りをさせていただきました。客観的に住宅性能を判断してくれる制度があるのに保障も担保もない自称優良工務店を集めることは、かえって住まい手を泣かせてしまうことに繋がる危険性を大いに含んでいると思うからです。
まずはみんな、住宅性能表示を使えばよいのです。そのような制度を無視して、自社の独自の基準で「高性能です」とPRしたところで意味はありません。その前に、やるべきことをやりましょうよ、とそういう話なのです。

住宅事業者から消費者に情報を発信するのはとても大事なのですが、それらの住宅事業者も、ほとんどが「木を見て森を見ず」な状態で、本質を見失ったまま家づくりをしているため、結果的に消費者を惑わせてしまっている気がしてなりません。

「性能は大事だけど、将来も不安だしお金はそこまで出せない」と、そんな気持ちでさまざまな住宅会社をさまよわれているお客様が多いのも、根本的な原因を探れば、そのように中途半端な家づくり情報にさらされているからでしょう。結果的に間違った選択をしてしまって、後悔されているご家族も一定数いらっしゃる印象ですが、建ててしまってから相談に来てくださっても、私たちができることは残念ながらそんなに多くありません。
お客様サイドも必死に調べないと、正しい情報には触れることができないのだと、ぜひ肝に銘じていただきたいなと思います。

会社より、人より、大事なのは「家」

「大きい会社だから安心」「丁寧に説明してくれたいい人だから」など、そういう理由で住宅会社を選ぶのはやめましょう。

あなたやご家族の快適な暮らしは、当たり前の話ですがその会社やそのスタッフさんではなく、住んでいる家そのものに影響されます。

だからこそ、家のことを最優先で考えなければいけないし、その家がきちんとしたものかどうかをシビアにチェックしなければいけません。その時の判断基準となるのが、公的な検査です。

検査を入れないのは、車で言えば「大手メーカーだから安心」とか「整備士さんの人がいいから信用できる」と車検を受けずに高速道路を走っていることと一緒です。そんなこと、怖くてできませんよね? 残念ながら、住宅業界ではそれがまかり通っているということです。

また、たまにご相談いただくのが「民間の第三者検査ではダメなのか?」というものです。

公的な検査は住宅性能表示制度のみですが、いくつかの民間企業も第三者検査のサービスを提供しています。

導入していないよりははるかにマシですが、民間の検査機関は、やはり営利の団体。住宅会社が直接のお客さんになってしまうため、忖度が働くケースもあると聞きます。

公的な検査であれば、本当の意味で中立的な立場から検査されますから、そのような観点からみて弊社は住宅性能表示制度を採用しています。何より保障が担保されますからね。

まとめ

例によって長いブログになってしまいました。お伝えしたいことが多いテーマだったので余計に力が入ってしまいましたが、このような内容に興味を持っていただけるあなたのような方のおかげで、弊社は存続できています。最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。

いずれにしてもまずは、自称ではなく、公的に性能部分が担保されている会社を選別すること。その際、性能については裏付けのあるかたちで証明されているのが大前提です。

仕様書を作っているかどうかの確認や、過去の工事写真を見せてもらうのもよいでしょう。過去の住宅の書類は一式保存してあると思うので、どういったものを資料として保存されているか、個人情報保護に問題がない範囲でチェックさせてもらうのもよいかもしれません。(仕様書がなかったり、工事写真が極端に少ない会社を信頼するのはおすすめしません)

それらの条件をクリアした上で、好みの住宅会社を探すようにしていただければ、ほとんどの場合、不安を感じなくて済むのではないかと思います。

いずれにしても、あなたの暮らしや人生に大きな影響を及ぼす家づくり。住宅会社選びで9割決まると思っていただいて構いません。間違いのない選択ができるよう、上記のようなポイントに気をつけながら、家づくりのパートナーを探していただければ幸いです。

もし何かお困りごとがありましたら、お問合せページからご相談ください。

それでは、また。

足立 操

ブログの最新記事4件

>住宅見学で本当に確かめるべき21のチェックポイント

住宅見学で本当に確かめるべき21のチェックポイント

あなたは完成見学会やモデルハウスで、その家の「どこを見るべきか」ちゃんと分かった上で参加できていますか? あなたの家づくりの助けとなる「住宅見学 21のチェックリスト」を限定公開中です。