なぜ、あなたはドツボにハマるのか。住宅会社を回れば回るほど、家づくりを調べれば調べるほど迷ってしまうワケ。

こんにちは、代表の足立です。

コロナ禍によるオンラインシフトも相まって、にわかに建築系のYouTubeチャンネルが増えてきましたね。かくいう私も、毎週火曜日にYouTubeでのライブ配信をしておりまして、ユーザーさんから投稿いただく家づくりの悩み相談に回答をしています。

これまでとは異なるかたちで情報をお伝えできるようになったことを嬉しく思う反面、いただく質問を見て、「本当に悩んでいらっしゃるんだな」とか、「間違った方向に行ってしまいそうだな」とか、ヤキモキしてしまったり。
問題の多い業界ですし、YouTubeでは公開できないような情報もあって、直接お話したい!と思うケースも多いです。笑

さて、おかげさまでご相談くださるお客さまも増えているのですが、お問い合わせいただくなかで、とりわけ多いセリフがこちらです。

 調べれば調べるほど、
 いろんな会社や建物を見て回れば回るほど、
 よく分からなくなってしまいます…

実際、このようなことで悩まれて、「いったい何を信じたらいいんだろう?」という感じで弊社に相談に来られる方が、本当にたくさんいらっしゃいます。

なぜあなたは家づくりで迷うのか

いろんな工務店やハウスメーカーを調べるなかで、「いいなあ」という気持ちはあるけれど、何かが引っかかる。腑に落ちない部分や疑問点が残る。

だから他の会社も見てみるんだけど、やっぱり何かが引っかかる…ということが続いて、最終的には何が正しいのかよく分からなくなって疲弊してしまう。

あなたは、こんなふうに感じたりしていませんか?

でも、そうなってしまうのは、実のところ当たり前なのです。

少し過激なことを言いますが、世の中に、さまざまな住宅事業者がいるなかで、まともな家づくりをしている会社は、ほぼゼロ。各地域にほんの2〜3社です。

ここで言う「まともな家づくり」というのは、最新の知識や技術を使用し、十分な性能を担保しており、意匠性も高い、そんな家づくりのことです。

「いやいや、どの住宅会社も、当然そういう家を作ってるんでしょ?」

と、あなたはそう思われるかもしれませんが、大間違いです。

多くの住宅会社は、昔ながらの家づくり、とでも言うのでしょうか。ある一定のタイミングから時代が止まっていて、失礼な言い方をすれば「ダメダメな家」を建てています。

私の感覚で言えば、市場の住宅会社のうち、およそ9割以上がダメダメな家を建てているので、そんななかで、あなたがいい住宅会社を探そうと思っても、なかなかいい会社に巡り会えないのは、至極当然の話なのです。

本当に9割以上がダメなのか?

とは言え、本当に9割以上の住宅会社がダメなのか、というところは、なかなか信じていただけない部分でもありますよね。

私たちがそのように主張しても、「自社を売り込みたいから他社を蹴落とすんでしょ?」なんて思われてしまうかもしれません。

なので、客観的なデータとして、非常に興味深い(というか恐ろしい)資料があるのでご紹介します。

日弁連(日本弁護士連合会)が提出した「4号建築物に対する法規制の是正を求める意見書」というものです。長いので、一部抜粋します。

また、関東・東海地方をエリアとするプレカット工場で加工された物件から、2階建て木造軸組住宅の4号建築物に限り、無作為に100件を対象として、プレカット工場に渡された図面とプレカット伏図を基に構造計算(許容応力度計算)を試みた結果、100件すべてにおいてエラー(NG)の結果が出たという調査報告もなされている。
(日本弁護士連合会:4号建築物に対する法規制の是正を求める意見書)

どういうことか、ちょっと分かりづらいと思うので、要約すると、

住宅の構造材を加工するプレカット工場で、渡された図面を元に構造計算したら、100件が100件とも、必要な強度に達していなかった。

簡単に言えば、こういうことになるかと思います。90%どころではありませんでした。調べてみたら100%、ダメダメな家だったということです。

これは、非常に問題だと思いませんか?

非常に根深い問題なので、もう少し掘り下げてご説明しますね。(ちょっと難しいので、気にならない方は読み飛ばしてください。上の話で、日本の住宅が全然ダメダメだということをご理解いただけたなら、それでOKです)

まず、家づくりをする上で、耐震性能はかなり優先順位が高いものですよね。

せっかく建てた家が災害によって住めなくなってしまえば、資産価値や居住場所の消失、場合によっては生命の喪失にもつながります。

そんな重要な耐震性能。構造計算というものをして、安心な構造になっているかどうかを事前にチェックしておかなければならないという決まりがあります。

建築物はすべて『許容応力度計算』という詳細な構造計算によって強度を計算しなければいけないのですが、木造二階建て住宅に限り、『壁量計算』という簡易的な計算でOKということになっています。

木造二階建て住宅のことを法律上「4号建築物」と呼ぶのですが(厳密な定義は異なりますが、おおよそそのような理解で問題ありません)、その4号建築物に限り、簡易計算でOKということにしているのが「4号特例」。これが、前述した「構造オールNG住宅」という問題を生み出しています。

「簡易計算でも、やっているなら構造的には問題ないんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、なんと、簡易計算すらしていない、というのが実態でした。

これも4号特例によるものですが、ほとんどの行政庁では、計算した構造図面の提出は、建築士の任意ということになっていました。つまり、構造計算書の提出義務がなかったのです。
本来、提出しないだけで、計算はしないといけないのですが、その『提出義務なし』を曲解して、「出さなくてよいなら計算する必要もないよね!」ということで簡易計算もやってこなかったのが、これまでの住宅業界です。

情けないというか、世の住まい手さんたちには申し訳ない気持ちでいっぱいです。

熊本地震をきっかけに、この4号特例を問題視する動きが加速し、前述の日弁連の意見書などが出てきました。そのおかげもあって、つい最近の話ですが、2020年3月に簡易計算書の提出が義務化となりました。喜ばしいことではありますが、そもそも簡易計算では構造強度を検討しきれないですし、まったく安心とは言えません。ただ、この簡易計算すら、これまで計算をしていなかった建築士さんでは難しいと思います。

建物構造の責任者は誰なのか

ついでなので、現在の構造計算の流れから問題点を見てみましょう。

前述のプレカット工場は建物の骨組みとなる構造材を加工する場所です。構造材を扱う工場ですから、住宅会社や建築士からラフな間取り図面が届いて、「構造検討をしてくれ」との依頼が来ます。

この依頼の流れが、実はすでにおかしいと言えます。

そもそも、構造の検討というのは、建築士がやるものであって、プレカット工場にやらせるものではありません。自分がやるべきことを丸投げしている時点で、建築士としては失格と言ってもいいくらいです。

プレカット工場も、自社の構造材を使用してほしいからと構造の検討から請け負うケースもあるのですが、構造のプロがいるプレカット工場とそうではないところが混在しているため注意が必要です。

いずれにしても、プレカット工場は設計事務所ではありません。建築士が作るべき図面を、プレカット工場に作ってもらっている時点で、その住宅事業者はアウトです。

もっと言えば、プレカット工場が建築基準法に併せて構造図面を作成したとしても、意匠性などの問題で「これではだめだ」と改悪してしまう建築士も存在するようです。

こんなふうに、誰も構造のことを考えずに建てているのだから、100%NGになるのは当たり前の話なのです。

(ちなみに弊社の場合は、自社で構造を検討したのち、構造専門の設計事務所に依頼をしています)

まとめ

少し長くなってしまいましたが、建物の耐震性能を取り巻く現状について、なんとなくご理解いただけましたでしょうか?

どこを見てもイマイチ納得しきれない…

もしあなたがそんなふうに悩んでいるとしたら、心配はいりません。

建築基準法にすら適合していない物件が100%なのだから、どこにしていいのか分からないと悩むのは当たり前です。当然そうなります。

この構造の話は一例ですが、構造に限らず、日本の住宅産業では、どの領域でも似たようなことが起きています。

ダメな住宅会社が市場のほとんどを占めているわけですから、いい会社に出会える可能性はそもそも少ないのです。

じゃあどうしたらいいの?というお話になるのですが、それはまた次回。優先順位をどう付けたら正しい住宅事業者に出会い、ちゃんとした家が建てられるのか、またご説明していきたいなと考えています。

それではまた。

ちなみに、日弁連の意見書は、以下のページから確認いただけます。
ご興味のある方は趣旨や全文PDFなど、ご覧いただければと思います。

https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2018/180315_6.html

ブログの最新記事4件

>住宅見学で本当に確かめるべき21のチェックポイント

住宅見学で本当に確かめるべき21のチェックポイント

あなたは完成見学会やモデルハウスで、その家の「どこを見るべきか」ちゃんと分かった上で参加できていますか? あなたの家づくりの助けとなる「住宅見学 21のチェックリスト」を限定公開中です。